スマホ美顔器開発ストーリー

開発者:二上達裕(株式会社J・STORIA 代表取締役、株式会社西堂美容研究所 代表取締役)

NOFL Smartは、(株)西堂美容研究所で開発されました。西堂美容研究所はもともと業務用美容機器を開発していたメンバーによって設立され、業務用美容機器の技術を使った家庭用美顔器を開発しています。そして、これまでにはない新しい発想の美顔器として開発されたのが、スマートフォンに取り付けてスマートフォンアプリでコントロールする世界初のスマホ美顔器NOFL Smartです。

スマホにくっつけるという発想

「どうしてスマホにくっつけようなんて考えたんですか?」とよく聞かれます。美顔器を開発するなかで、いかにコストを抑えて高機能にするかを考えた結果思いつたアイデアです。


初期のデザインモックアップ

美顔器に高度なマイコンやプロセッサを組み込むと製造コストが上がり複雑化します。そこで、多くの方たちが使用しているスマートフォンで美顔器をコントロールできないかと考えました。そうすれば、スマホの高度な機能を使っていろいろなことができます。例えば使用履歴を残したり、写真を撮って比較したり、ヒーリング音楽を流したり。また、スマホの大きな画面で視覚的にトリートメント設定することができ、使い勝手もいいはずです。そうなると美顔器自体は制御系の機能を持たないわけですから、小型化することも可能です。使うときはスマホにくっつけてスマホを取っ手にし、使わないときは小さなポーチに入れてしまっておく。小さいから持ち運びがとても便利で、本体機能を削減した分販売価格も抑えられます。安くて機能が充実していて使いやすい、そして自分に合ったパーソナライズ設定などもできれば大きな効果も期待でき、いいことづくめです。そんなことをあれこれと考えながらNOFL Smartの開発はスタートしました。

ガラパゴス化している美顔器

進化していない携帯電話(フューチャーフォン)をガラケー(ガラパゴスケータイ)といいますが、家庭用美顔器もここ10年ほど大きな進化はしていないと思います。最近の美顔器は多機能化していますから、その意味では変化してきているといえます。しかし、手で握る取っ手部分と顔にあてるヘッド部分で構成されている形状は昔と変わっていません。また、操作もオン/オフスイッチと強弱スイッチでのみ行い、多機能美顔器はそれに機能切替スイッチが加わるだけです。じつは西堂美容研究所が最初に開発したNOFL美顔器も同様で、スイッチ、強弱、タイマー、スタート/ポーズのボタンでのみ操作する、取っ手とヘッドで構成された美顔器です。

IoT美顔器

NOFL SmartはIoT美顔器と呼ばれていますが、最初からIoT美顔器の開発を目的にしていたわけではありません。ガラパゴス化した美顔器が、もっと使いやすくならないかと考えたときに、誰もが持っているスマートフォンでコントロールしたらどうだろうと思ったことが開発のきっかけでした。しかしスマートフォンと一体化させて使用するわけですから、結果としてIoT美顔器になります。ではここで、IoT美顔器とはどいういうものなのか考察してみましょう。まずIoTとは何か。「Internet of Things」の頭文字をとってIoT(アイオーティー)といいます。直訳すると「物のインターネット」ですが、これでは意味がわかりません。もっと解りやすくいうと「インターネットにつながっている物」のことです。ですので、IoT美顔器とは「インターネットにつながっている美顔器」ということになります。美顔器がインターネットにつながっていると何ができるのでしょうか? ひとつめとして、インターネット上にある情報を利用することができます。例えば今日の天気を調べて、湿度が低ければ充分に保湿した方が良いと利用者に伝えることができます。ふたつめとして、利用者の肌の情報を解析することができます。美顔器の電極から肌の情報を採取し、それをインターネット上のサーバにアップロードして解析し、肌の状態のデータを利用者にフィードバックすることができます。そして最後に、美顔器を制御するアプリをアップデートしていくことで、新しい機能を追加することが可能になります。
最初はスマホと組み合わせて使い勝手をアップさせようという目的でしたが、だんだんそこにIoT美顔器としての機能を持たせることが加わっていきました。

これまでにはなかったものを作るということ

しかし、クリアしなければならないハードルもたくさんありました。スマートフォンと連携させる機器のほとんどは、BluetoothかWi-Fiでスマートフォンとつながっています。しかし、以前に開発した大型美容機器で無線通信を使ったところ、電波障害に悩まされたという経験があったので、無線通信は使いたくありませんでした。無線通信のマイナス面は電波干渉だけでなく、それぞれの国の無線通信認可も取得しなければなりません。また、スマートフォンの無線通信規格にも影響される可能性があります。そこで、無線通信は使用せず、他の方法での連携を考えました。もちろんケーブルでの接続は選択肢に含まれていません。そして思いついたのが、スマートフォンの画面に明暗の信号を表示し、それを美顔器の照度センサーで読み取って連携させるという方法です。そんな機器は今までに存在しませんし、理論上は動作すると思われても実際に動くかどうかはやってみなければわかりません。まずは、照度センサーによるスマートフォンとの連携をテストするために、照度センサー回路を作りました。そしてその回路にスマートフォンの画面を当てて、照度センサーが反応するかどうかをテストしました。最初は全く反応しませんでしたが、照度センサーの感度を調整することで動作するようになりました。スマートフォンの画面が明るいと照度センサー回路がオンになり、暗いとオフになります。これで理論が実動することがわかりました。


照度センサーテスト回路

次にぶつかった壁は、美顔器をどうやってスマートフォンに取り付けるかです。スマートフォンのサイズはさまざまなので、異なったサイズにも対応する必要があります。また、顔に当てているときに動いたりしないように、しっかりと画面にくっついていなければなりません。さまざまな取り付け方法を検討した結果、クリップで挟むのが最も使い勝手が良く、どんなサイズにも対応できるという結論に至りました。


スライドさせてはめるクリップ(左)と洗濯バサミ型クリップ(右)

この他にもたくさんの試行錯誤を繰り返しながら、NOFL Smartは形になっていきました。

効果的なEMS電流

形ができてきたら、今度は最も重要な電流です。NOFL Smartは顔の表情筋を微弱電流で刺激してたるみを予防したりハリを持たせたりする美顔器です。では、どのくらいの強さのどんな電流を流せば効果があるのでしょうか。まずは他社製品の分析から始めました。実際にいろいろな製品を試してみると、心地よいものから痛みを強く感じるものまでさまざまです。理想的には痛みがなく、弱くても表情筋がよく動く電流です。神経が多く脳に近い顔に電流を流すわけですから、電流は弱いに越したことはありません。しかし、表情筋がしっかり動かなければ意味がありません。そこで重要になってくるのが周波数です。美顔器には低周波とか高周波とかがありますが、その周波によって効果が全く違ってきます。そこで私たちは、電流を好きなように作り出し調整することができる機材を使って私たち自身でテストを繰り返し行いました。


東京都産業技術研究センターで行った通電テスト

その結果、幅が広い個人差に対応でき、他社製品に比べて電圧もそれほど強くなく、心地よく表情筋が動く電流と周波数を割り出すことができました。

スマートフォンアプリで制御すると何が違うのか

前述しましたが、NOFL Smartはスマートフォンにインストールした専用アプリでコントロールします。基本的な電流の強さと周波数はあらかじめ美顔器内で設定されていますが、それをスマートフォンアプリで細かく組み合わせることができます。そうするとどうなるかというと、強い電流と弱い電流が複雑に組み合わされ、最終的には多くのバリエーションで筋肉運動を促すことができるようになります。目尻のような繊細な部分には弱い電流を短時間流し、充分なインターバル(休止)を取りながら継続的に筋肉を刺激します。一方フェイスラインのように大きな面積で肉付きがいい部位に対しては、強い電流を長めに流してしっかりと筋肉運動をさせます。これらの設定は、アプリを変えることによって変更することができます。すなわち、美顔器本体はそのままで、アプリをアップデートすることでよりさらに効果的な設定に進化させることも可能になるわけです。

このようにしてNOFL Smartの開発は進み、実際にスマートフォンアプリと連動するプロトタイプができ、現在の量産品が完成しました。これまでにはなかった全く新しいものなのと、機能やデザインに妥協を許さなかったため、開発着手から製造開始まで、約2年半かかりました。価格は製造コストから割り出すのではなく、誰もが求めやすい価格を最初から設定し、それに向かって製造コストを抑える努力をするというプロセスだったことも開発期間に影響しています。日本製であることにもこだわり、高機能高品質な製品を低価格でご提供することを目的に開発された次世代美顔器がNOFL Smartです。

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